雪の日は、黙って空を見上げるのね。
そっと微笑む貴方の暖かさが好きよ。
まるで冬を溶かす春の息吹のような。
そして、それは、だからこそ、冷たい。
鋭く、深く、私の心を貫き、抉り取る。


「薫殿。もう起きたのでござるか」
「剣心こそ。見事に積もったわね」
「ああ」
「羽織をおろしたの。寒いでしょ?」
「拙者は大丈夫でござるが・・・」
「遠慮しないで。せっかくだし、ね?」
「では、お言葉に甘えて」


「わあ、ぴったり」
「拙者などが袖を通して本当に良いのだろうか」
「もちろんよ。父さんも喜ぶわ」
「暖かいでござる」
「・・・本当に?」
「薫殿?」


「今、ここで、暖かくなった?」
「・・・ああ」
「そう」


その温もりの記憶は、私が与えたものであるように、どうか、どうか。