「おはようございます、緋村社長」
「おはよう」
「これ、例の書類です」
「もうできたの?随分早かったね」
「ついでに棚の資料を整理しました」
「助かるよ」
「あとこれ、コーヒーです。アメリカン」
「丁度飲みたかったんだ」
「他に何かできることはありますか?」
「とりあえず結構」
「では私はこれで」


「・・・神谷さん」
「はい」
「顔色が悪いみたいだけど」
「えっ」
「どうかした?」
「いいえ、別に」
「もしかして徹夜してこの書類を?」
「ま、まさか」
「だよね。――昨晩の人身事故、災難だったね」
「・・・はい」
「ちゃんと動いた?」
「おかげさまで」
「そう。今の嘘だけど」
「・・・・」



「ありがとう。君は自慢の秘書だよ」
ニコリ。



「・・・わ、私・・・」
「ん?」
「私にできることがあったら、いつでも言ってください」
「・・・・」
「緋村社長のお役に立てるのなら、何だってやります」



「じゃあ、君をいただこうかな」
「しゃ、社長?」
「何だってやるんだろう?」
くすくす。
「か・・・からかわないでください!」


――ぴちゃっ。
「す、すみません。今拭く物を持っ」



「からかう?」
「社長・・・?」



ゾクリとするほどの冷たい眼差し。
「これは命令だ」



「今晩8時、地下駐車場。・・・一人でおいで。絶対だよ」